- ブラックパンサー
- 英題:Black Panther
- 2018年 公開
アベンジャーズにもチョロっと出演していた、ブラックパンサー。
本作をもって、本格的にMCUに合流してくる流れですね。
一言でいうと、とても気に入りました!
気に入ったところ
一つの作品としてのまとまり具合
無駄が無く、スッキリまとまっている
必要なさそうな展開や無駄なシーンが無かったと思います。
どれも描く必要のある展開・見せる必要のある場面だったので、ストーリーに説得力がありました。
この作品の中に散りばめたポイント(要素や伏線)は回収してちゃんとまとめていたと思うので、スッキリしてて観やすかったなという印象です。
相反する要素がバランスよく織り込まれている
アフリカについて自分が漠然と抱いていた伝統最重視の後進国的イメージと、近未来風のハイテクなアイテムやシステムなんかが作中にうまく共生してて、絵面的にも話の展開的にもバランスが良かったです。
脈々と受け継がれてきた古き良き時代のものと、未だ見ぬ遠い未来に期待するもの。
それぞれ真逆にあるものが、現代でちょうど間を取るように偏りなく混ざっているように感じました。
アフリカ方面の文化に触れる良い機会になる
部族によって異なる装い
アフリカ系のいろんな部族の衣装が見られます。
特に、唇に円盤を嵌めてる部族の方と、その方が実際に話す様子が見られたのが良かったです。
写真では見たことあったけど、これ着けてて喋る時に支障ないのかなって気になってたので、実際に動いたり話している様子が見れたのは良い機会でした。疑問がスッキリ!
アフリカ系、それぞれの部族語
評議会みたいな集まりで各部族のボスたちが話すときに、みんなそれぞれ違う言葉で話してたと思うんですよ。
あれって、今のアフリカに実在する言語ですよね、きっと。
特に、舌打ち(舌鼓?)しながら発声する言語のセリフが聞こえてきたのが印象に残っています。
映画の中では確か女性のキャラクターが話してたセリフだったと思うけど、この言語、お笑い芸人のカラテカ矢部さんがテレビの企画でアフリカに滞在して会得してたのを見たことがあるんですよ。
日本語みたいなシンプルな発音の言語を母語とする人がこれを修得するのは、なかなか難しそう。
カラテカ矢部さん、メッチャ練習なさったんだろうな。
複数タイプのアクションが楽しめる
映画全編を通して、基本的にアクション満載な作品です。
対決・戦闘シーンは、
- 序盤:カーチェイス
- 中盤:肉弾戦
- 終盤:近未来なハイテク武器&引き続き肉弾戦の大乱闘
…と、いろいろなタイプのアクションが見れられるので、飽きにくい構成だったと思います。
キャラクター・俳優さんについて
女性戦士たちが強くてカッコいい
後ろで控えめに待機して掩護してるとかじゃなく、ガンガン前線に出てゴリゴリ戦ってましたね。
男性のオマケとしてでなく、場に華を持たせるための装飾としてでもなく、それぞれ役割があってそこに居るんだってちゃんと描かれてるところに好感が持てました。
あとは単純に、皆さん暴れ具合が激しめなので観ていて爽快で楽しいです。
妹ちゃんがカッコよくて面白い
国王の妹シュリは、ちょっとイタズラっ子な感じの、茶目っ気のあるキャラクター。頭が良くて面白いなんて、もう最高じゃん。
あと、この作品は皆それぞれ使う武器が違うけど、シュリの武器はレーザーが撃てるグローブみたいなアイテム。
本人の体付きは引き締まってシュッとしてるのに武器だけゴツくてデカイので、そのギャップも自分が気に入ったポイントでした。
ワカンダの技術力と本人の賢さで、どんどんハイテク便利アイテムを開発していってほしいです。
あとお兄ちゃん大好きだよねこの子。
兄弟だからというのもあるけど、国王との信頼関係というか結びつきというか、そういうしっかりした繋がりを感じられる描かれ方だったと思います。
キルモンガー(の役者)の色気
この作品のヴィランである主人公の従兄弟(マイケル・B・ジョーダン)は、なんだか物凄く色気があって、とても美しい。
倒さなくてはいけなかったのが惜しいです…
もし倒さず生かしておけてたなら、キルモンガーとティ・チャラのそれぞれ異なる『物の見方』をお互いに出し合って、一緒にバランスの取れた治世を築いていけたかもしれないのに。
仕方ないけど、こんな魅力的なキャラクターを亡くすなんてとても勿体ない。
…いや、私がこの役者さんの演じるキルモンガーを気に入ってしまっただけなんですけどね!
ただ、彼を倒して玉座を改めて勝ち取った国王は、今まで頑なに拘ってた『鎖国』方式から『開国』方式へと、国の在り方を方針変更しました。
退けて無かったことにしてしまうんじゃなく、ちゃんと従兄弟の想いや信念を取り入れてワカンダの新しい時代へと繋げていった形だと思うので、亡くすのは惜しいキャラクターだけどやっぱり必要な退場だったと思います。
魅力的ではあるけど、ワカンダに来るまでの間によろしくない事を色々とやってきたのも彼の側面の一つなので、ヴィランであることには変わりないしね。
ちょっと複雑な気持ち。
猿の部族のボス、ンバクの茶目っ気
猿の部族(ジャバリ族)のボス・ンバク(エムバク)って、実は結構ひょうきん者だったりする?
俺ベジタリアンだし!って言ってたけど、そのムキムキのマッスルボディの成分、野菜なの?そんなわけないよね(笑)
登場した時は厳つくて荒っぽい印象ばっかりだったのに、最後まで観てみると、彼は義理堅くてユーモラスでなんだかカワイイなと思えてきたから不思議です。
興味が湧いたところ・気になるポイント
Glory to Hanuman
ンバクは、国王ティ・チャラとの決闘の時に「Glory to Hanuman!」と言っていましたね。
ハヌマーンって『インドの猿神様』という印象しか無かったので、アフリカ方面の文化にフォーカスした作品の中でその名前を聞くと思ってなくて、少し驚きました。
アフリカ方面の人の宗教って精霊信仰系の土着宗教かキリスト教のどっちか、みたいなイメージがあったけど、アフリカにも猿神様いるの?アフリカでもハヌマーンて名前なのかな。
それとも、まさにインドのあの神様のことだったのかしら?
国王と国民との距離が近い?
物語のラストの方で、国王なのに割と平然と市井をぶらついてて、しかも国民側も結構スルーしてたのが意外でした。
すれ違うタイミングでも国民たちは特にお辞儀も何も無しで普通にすれ違っていってたので、ワカンダって、普段は王様サイドと国民が割と気安い関わり方な国なのかしらと思ってみたり。
非ホワイトウォッシュ
近頃はホワイトウォッシュが問題になりがちだったけど、この作品は無理やりに白人化されず、アフリカ系設定のキャラクターをちゃんと黒人系の役者さんで固めていましたね。
非アフリカ系の設定やキャスティングに変更しておかしな事になったりしてなかったので、その点は良かったと思います。
作品を通して安定してずっと出てくるレギュラーの白人キャラはロスさん(マーティン・フリーマン氏)のみ。敵側のクロウも白人キャラだけど、ちょっと出てすぐ退場だからノーカウントで。
アメコミ作品かつアクションものという系統の映画で、ここまで白人少なめのメンバー構成の作品って、私は今まであんまり観たことがありませんでした。
自分にとっては、これは目新しい感じの作品でしたね。こういうの、もっと観たいです!
ちょっと考えちゃうところ
国の在り方、異なる道のり
鎖国して外界から隔離することで国と民を護りたい国王ティ・チャラの理想も、開国して世界を支援することが回り回って国を護る結果に繋がると考える従兄弟キルモンガーの理想も、どっちも間違ってない。
やり方が一致してないからといって、決して『悪』ではないんですよね。どちらも、国や民を想ってのことで。
それぞれ形の違う正義・信念・理想のぶつかり合いで、たった一つの正解というのは無かったと思います。
この辺は、もののけ姫で観たタタラ場衆・狼と猪たち・唐傘連たちの三つ巴の構図に通じるところもあるような。
それぞれの信念と思惑がお互いの妨げになるから、それを貫くためには戦う(=勝って排除する)しかなくて…っていう。
絶対的な悪との対決ではないから、クリアに答えを出すのが難しいですよね、こういうのは。
アフリカに対するイメージ・先入観
アフリカって『ジャングルか砂漠で、槍持って当日分の獲物を狩りに行ってて、原色ハデハデの超賑やかな柄の服着てるか腰ミノ同然かのどちらかで…』みたいな、ひたすらステレオタイプなイメージがありました。
自分がそういう先入観を持ってるということを、この映画を観て再認識させられたなと思います。
この現代まっただ中に、さすがにそんなワケないのにね。ウチの国だってサムライもニンジャも本物は絶滅済みだし。
ただこれは、作品の終わり頃にあった国際会議みたいな場でどっかの国のお偉方も似たようなことを言ってたし、そんな思い込み・誤解を抱いてるのはなにも私に限った事ではないんだなーって。
イメージだけで『自分トコより遅れてて格下』みたいに決めつけて見下したような態度で接してたのが…もう…見ていて痛々しい気持ちになるね。
その後、そんなこと言われたティ・チャラがニヤリと笑ったところが痛快でした。
総評
難解なストーリーでもなく、極端に不快な性質のキャラクターもおらず、全体的にあっさりクリーンな感じの作品です。ヒーロー映画だから、ある程度クリーンなのは当然か(笑)
楽しめるポイントがたくさんあって、最後まで作品に入り込んで観ていられたと思います。
すごく複雑でややこしいお話が好みな方には、ちょっと物足りないかも。
ヒーローものがお好きな方や、そうでなくてもサクッと楽しんでスッキリしたいタイプの方にはおすすめしたい映画です。
ワカンダよ、永遠なれ!